お金のお話~人生100年時代を生き抜く~
ひと昔前までは、「人生50年」と言われていたのですが、食生活の改善や医療の進歩などにより、平均寿命が延び、今では「人生100年時代」と言われるようになりました。
人生100年時代の到来により、現在話題になっているのが「老後の資金が不足する」ということです。嘘のように聞こえて本当の話なのです。
そこで、どのようにすれば生活を賄うことができるのか、将来のお金について考えていきましょう。
◎老後の収入の保険は「公的年金」!
誰もが経験することが少ない「人生100年時代」が今、現実のものとして到来しようとしています。
食生活の改善、生活しやすい環境など色々条件が整っている中で、長寿の一番の要因は「医療の進歩」ではないでしょうか。
様々な要因で長寿になったことは喜ばしいことですが、その一方で、老後の資金について、特に50歳代以下の世代では、不安を持っているとリサーチされています。
少しでも不安を取り除くことができるように、現在の一般的な高齢者の家計を参考に、将来に向けて、今できることを考えていきましょう。
まず、老後の生活のベースとなる収入は「公的年金」です。
高齢者の平均所得の7割が年金だと言われています。
また半数以上の世帯は、公的年金のみで暮らしているのが現状なのです。
現在は、充実した公的年金制度という土台がありますので、老後資金のすべてを自分で準備するという必要はありません。
日本は世界に類のないスピードで少子高齢化が進行しています。
年金制度の持続の可能性を高めるためには、年金受給世代の増加と、現役世代の減少を踏まえて年金の給付水準を調整する「マクロ経済スライド」が導入されました。
この仕組みにより、長時間に渡る年金の受給額は抑えられる可能性が高くなってきます。
しかし、それでも公的年金制度は、老齢・障害・遺族といった状況で、所得を十分得られなくなったときの保険であることには変わりはありません。
若い世代を中心に「どうせもらえない」、「貰っても金額が少ないに違いない」という理由で保険料を支払っていない方がいます。
保険料を支払わずにいれば、将来の収入ベースを失うことにもなり、困った事態に陥ってしまうことになります。
保険料を支払えない場合も、滞納はさけるようにし、免除の手続きをするのがベストな選択です。
そうすれば、年金を受ける権利が守られ、年金の一部が保障されます。
◎マクロ経済スライドの仕組み
マクロ経済スライドとは、そのときの社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みのことです。
・基本的な考え方
一般的に年金額は、賃金や物価上昇すると増えていきます。
しかし、マクロ経済スライドの基本的な考え方として、一定期間、年金額の伸びを調整する(賃金や物価が上昇するほどは増やさない)ことで、保険料収入などの税源の範囲内で給付を行いつつ、長期的に公的年金の財政運営をしていくのです。
また、5年委一度行う財政検証の際に、おおむね100年後に年金給付費1年分の積立金を持つことができるように、年金額の伸びの調整を行う調整期間を見通しているのです。
◎無職の高齢者世帯は月に4万2千円の赤字!
公的年金をベースにしたリタイア後の暮らしは、収入・支出ともに現役世代の生活からガラリと変わってきます。
平均的な50歳代世帯の年間家計収支を見た場合、手取り収入は614万円で、消費支出は421万円となっており、収入と消費との差額は、年間193万円の黒字となります。
一方、65歳以上の一般的な無職の老夫婦世帯の家計収支ですが、年間の平均的な収入は232万円です。
しかし、年間の平均的な消費支出は282万円となっていますので、収入と消費の差額は、年間50万円の赤字となるのです。
この不足額を、貯蓄を取り崩して補うとなると、単純に計算しても、10年間で500万円、20年で1000万円となってしまい、これだけの貯蓄が必要となる計算となります。
あくまでも、この金額は平均額であり、個々の生活スタイルにより、家計も異なりますが、先々の収入が減ることを見据えて、早いうちから対策を打つことがポイントとなります。
近年の傾向として、定年延長や定年制度を設けていない企業もありますので、長く働くことも一つの方法ですし、投資などで長期的にお金を増やすことも有効となりますが、今まで投資などしていない方は、投資をする場合は十分注意して行ってください。
必ず元本が増えるという保証はありません。
投資を行う場合は証券会社など信用できるところに依頼するのが賢明だと言えます。
もう一つ賢明な方法として、家計を適切に見直し、お金を貯めることに意識を向けられれば、将来の赤字を大きく削減できる可能性があります。
◎現役のうちに、家計と保険を見直す!
老後になればお金が必要になるのではなく、収入が減る分、補填するお金が必要となるのです。
そのお金を貯めるために有効なのが固定費の見直しなのです。
できるのであれば、定年までに住宅ローンを完済したり、インターネットなど高額になりがちな通信費を見直し削減するなど、年単位で大きな支出を減らせるはずです。
また、他の支出でも、削れるものと削れないものを区分することも大切です。
家計のなかでも、見直すことで高い効果が期待できるのが、生命保険や医療保険です。
現在、益9割の世帯が何らかの生命保険や医療保険に加入しています。
また、支払っている生命保険料は世帯当たり年間約38万円。
しかし、これらの保険料は、高齢になっても減るということはなく、保険料の支払額は60歳代が年間39万円、70歳代でも33万円となっています。
まとまった保険料が減ると貯蓄しやすくなりますし、家計の好循環化につながりますので、子どもの独立や自分自身の定年などの節目で整備することが大切です。
現在の高齢者世代は、保険の貯蓄メリットを享受した世代ということもあり、「保険はお守り」とった感覚が根強く残っている世代でもあります。
しかし、保険はあくまでも将来の家計のリスクに備えるための手段です。
恒常的な赤字を抱える高齢者の家計で、赤字額の半分にも及ぶコスト負担は避けたほうがよいと言えます。
生命や身体に関するリスク、つまり、死亡・入院・障害・要介護などですが、これらに対して、何らかの公的保障給付が受けられるのです。
例えば、多くの人が不安に感じる医療費は、健康保険証を用いた現役世代の場合、自己負担割合は原則3割です。
また、これに加えて、所得に応じてひと月当たりの負担額に上限額が設けられている「高額療養費制度」もあります。
この「高額療養費制度」を利用した場合の医療費ですが、年収500万円の方の自己負担額は「8万100円+(医療費の総額-26万7千円)×1%」で、医療費が100万円でも、ひと月の負担は9万円足らずで済むのです。
70歳になれば自己負担額はさらに軽くなり、一般的な収入の世帯の窓口負担は2割となります。
また、ひと月の医療費の上限額は、通院の場合、個人ごとに1万8千円、世帯ごとに5万7600円となります。
高齢になるにつれて病院通いが増えても、医療費負担は一定額に収まるのです。
そのため、多くの人は貯蓄で賄うことができると言えます。
このように公的な制度がありますので、保険にこだわらないほうが、家計負担を減らせることになるのです。
◎老後も必要なのは「モノと賠償に関する保険」
医療行為に関する費用は、公的な制度が充実していますので心配する必要はありません。
しかし、その一方で、会計破綻に至るような最悪の事態でお金を失うことを防ぐため、「モノと賠償」に関する保険こそ、老後の生活を送るためには外せないものと言えます。
例えば、自然災害で終の棲家、そして須住まいの中の家財を失えば、数千万円レベルの損害が発生するのです。
このような場合においても公的な支援というものがありますが、支援金は、最大でも300万円に過ぎません。
また、歩いている時に、何かの拍子でよろめいてしまい、他人にケガを負わせるあるいは、他人の物を壊してしまうなど加害者になることがあります。
このような場合、法律上の損害賠償責任を負うことになるのです。
そうした時、相手に及ぼす損害は想定困難な場合が多く、家計に巨額の経済的ダメージを与える可能性があるのです。
災害で被災したり、加害者になって賠償責任を負ったりしたときに、ほとんどの人は貯蓄で対応することはできません。
そこで、これらの家計破綻が視野に入るリスクについては、「望む暮らし」を思わぬ形で奪われないように、保険などによる事前準備が欠かせないのです。
◎まとめ
「人生100年時代」は、長生きする分、暮らしのお金がより多く必要となる時代です。
将来が見えない不安から一歩飛び出し、まずは我が家の家計の現状把握に取り掛かりましょう。
早いうちに問題や乗り越えるべき課題が発見できれば、より効果的な対策を講じることもできると思います。